「前夜祭」という言葉には、どこか控えめな響きがある。本番は明日だから今日はほどほどに、という予告編めいたニュアンス。だから9月4日、金曜の夕方に汝矣島漢江公園(ヨイド・ハンガン公園)へ歩いていったときも、期待はそれほど大きくなかった。翌日の2026 ソウル世界花火大会本番に向けて、場所を下見しておこうくらいの気持ちだった。
結論から書くと、期待せずに行って驚かされた。前夜祭と呼ぶには立派すぎた。
ソウルが初めての方へ。汝矣島(여의도 / ヨイド)は漢江の中州にある島で、ソウルの金融街です。その川べりが公園になっていて、深夜まで開いていて人がいます。日本の花火大会と大きく違うのは、河川敷が普段から市民の居場所だという点。レジャーシートを敷いて、近くで食べ物を買って、何時間でも座っている。場所取りの厳しいルールも、浴衣で行く習慣もありません。

20時ちょうど、一発目が上がった瞬間
川沿いの遊歩道にテントが並んでいた。オレンジ色の救護テント、白と緑のブース、その間を行き交う人たち。まだ何も始まっていない、ごく普通の金曜の夜の漢江に見えた。そのときちょうど夜8時、対岸から低い音がひとつ響いて、顔を上げたときにはもう空に緑色の尾が広がっていた。

意外だったのはその後だ。試し打ちの一発で終わると思っていたのに、間隔を詰めて、しかもだんだん大きくなりながら続いていく。前の煙が晴れきらないうちに、次の一発がその煙を突き破って上がってくる。

空の半分を覆う大きさ
雲のかかった空に菊が一発開いた。音が先に体に届いて、光が後から目に届く大きさ。隣にいた人たちは言葉が出なくなって、ただ「あっ、あっ」と声を漏らしていた。

色も次々に変わる。赤系だけで三発が同時に開いた場面では、空全体がピンクに染まって、川の水面まで同じ色になった。

10分ほど経つと、ドローンが合流した
この祭りでいちばん予想外だった点だ。
まず花火が始まる。そして10分ほど経ったころから、ドローンショーが一緒に始まる。花火が終わってから交代するのではなく、残りの15分間、二つが同じ空に同時に存在する。
片側では火薬が炸裂し、反対側では数百個のLEDの点が音もなく動いて絵になる。音のするものと音のしないものが、一つの画面に収まっている。

形は一つでは終わらない。世宗大王が現れ、虎が現れ、ソウルへの訪問を歓迎する文字が空に浮かんだりもする。韓国が初めての方には、この部分が特に印象に残ると思う。
世宗大王は15世紀の王で、ハングルを作った人物です。1万ウォン札に描かれているのもこの人。虎は韓国を象徴する動物です。
正直、困った。どこを見ればいいのか分からなくて首を左右に振り続けた。花火を見ればドローンを見逃し、ドローンを見れば花火を見逃す。どちらも逃したくなくて、結局その中間あたりの何もない空を見ていたのだが、それも悪くなかった。

写真二枚ではこの時間帯が説明できない。花火とドローンが同じ空に同時にあるということが、写真では別々に撮った二枚にしか見えないからだ。下に動画を載せてあるので、そちらを見ていただくほうが早い。
フードトラックの配置図には、はっきりと「ドローン離着陸場」が独立した区画として記されていた。おまけの催しではなく、最初から一緒に企画されたプログラムということだ。
25分。短いのに密度が違う
前夜祭の花火は20時に始まって約25分だった。数字だけ見れば短い。ところが休みの区間がほとんどないので、体感はずっと長かった。


そして最後の2〜3分。ここからは数えるのが無意味になる。空に空いている場所がない。


写真では伝わらない部分
ここまで20枚近く写真を載せてきたが、いちばん大事なものが抜けている。音だ。破裂したとき光より先に体に届く振動、一発と次の一発の間隔、その隙間を埋める人々の歓声。それが入って初めて、あの25分になる。
そこで動画も一緒に載せておく。音を出して見ていただきたい。
前夜祭と本番、どちらに行くべきか
この記事でいちばん伝えたいことがここにある。
前夜祭の花火は本番のフィナーレに匹敵する水準だった。規模を抑えて味見だけさせる予告編ではなく、それ自体で完結したショーだった。本番用に取っておいてもおかしくないものを惜しみなく使う。その姿勢に、この祭りが来場者をどう迎えたいのかが表れている気がした。
だから、こう整理したい。
本番は人が多すぎて大変そうだと思うなら、むしろ前夜祭に来るほうをおすすめする。
前夜祭にも人は多い。ただ、本番と比べられる程度ではない。体感では本番のほうが10倍近く多いと思う。今回の前夜祭が初めての開催で、まだ知られていないからかもしれない。今後もこの形で続けるなら、前夜祭も次第に混むようになるのではないか。つまり今がむしろ狙い目ということになる。
そしてフードトラック。ここが伏兵だった
祭りの食べ物への期待値は、どの国でも低めに設定しておくものだ。高くて、種類が決まりきっていて、味は雰囲気で食べる。ところが今回のフードトラックゾーンは、その三つとも良いほうに外れた。
まず、場所を正確に押さえておきたい
汝矣ナル駅を出ると川沿いに並んでいるいつものフードトラックではない。そちらではなく、水光広場(ムルビッ広場)の一角に別に設けられた区域が、今回の行事のために準備された場所だ。
ここに入っているのはソウル市が認証したトラックである。そのためか品質が揃っていて、味がよく、値段も良心的だ。この違いを知らずに駅前のトラックで適当に買ってしまうのはもったいない。
入口に配置図が立っていて、これを見てから計画が完全に変わった。

前夜祭(9月4日)に出ていたのは、この16店舗だった。
| 番号 | 店名 | メニュー |
|---|---|---|
| 1 | トチコチ2 | 鶏の串焼き |
| 2 | ダックスキッチン | ピザ |
| 3 | ティファニー | コーヒー / エード |
| 4 | チュロドウェイ | 竜巻ポテト |
| 5 | チュラップ | チュロス |
| 6 | ウマイ食堂 | 牛肉炙り寿司 |
| 7 | ボックボック | 焼きそば |
| 8 | フィリフィリ | フィリーチーズステーキ |
| 9 | メリー | タコス |
| 10 | チキンレストラン | タッカンジョン(甘辛揚げ鶏) |
| 11 | ウォンドゥバンガッカン | コーヒー / シッケ(甘い米の飲み物) |
| 12 | カンシフード | クリームエビ / チリエビ |
| 13 | ケバビヤ | ケバブ |
| 14 | パステイク | ステーキ |
| 15 | オールステーブル | 韓国式軽食(ソットクソットク) |
| 16 | ラリサ | クレープ |
タコス、ケバブ、焼きそば、クレープ、フィリーチーズステーキ。祭りのフードトラックで普通に期待する構成ではない。

メニュー表がどれも明るい電光ボードなので遠くからでも何を売っているか読めるし、写真付きで英語表記のある店も多い。行列は長く見えても回転が速く、思ったより早く受け取れた。

1番トチコチ2の鶏串、5,000ウォン
選んだのは1番トチコチ2の鶏の串焼き。醤油だれをたっぷり絡めたものが一本と、間にねぎを挟んで塩だけで焼いたものが一本。一本5,000ウォン、日本円でおよそ550円ほど。日本の焼き鳥でいえばタレとねぎまにあたる。

正直に言うと、今まで食べた鶏の串焼きの中でいちばん美味しかった。祭り補正を抜きにしてもだ。身がしっかりしていて、焼き加減が正確で、たれのほうは表面が照りよく煮詰まって甘辛さがはっきりしている。塩のほうはねぎの甘みが鶏の脂に溶けて、むしろこちらに軍配が上がった。焼きたてを受け取って、川風の中に立ったまま食べる。この食べ方でしか出ない味がある。
15番のソットクソットク、5番のチュロス
軽食類はだいたい5,000〜6,000ウォン(およそ550〜660円)。祭り価格ということを差し引いても、いや差し引かなくても良心的だ。

ソースは自分でかける方式だ。トラック横のテーブルにケチャップとマスタード、辛いソースがボトルごと置いてあって、好きなだけかけられる。

デザートには5番チュラップのチュロスを選んだ。カップにチュロスを立てて渡してくれる形なので歩きながら食べやすく、アイスクリームを乗せたバージョンは、揚げたてチュロスの熱とアイスの冷たさが同時に来る。

ぼったくりだと感じるトラックが一台もなかったこと。それだけで、この祭り全体の印象が変わってしまった。
順番を逆にするともっといい
私はこう動いた。花火を最後まで見て帰ろうとしたら人が多すぎた。それで人波を避けるためにフードトラックのほうへ向かった。ところがこれが結果的によかった。みんな駅に向かった後だったので、これだけ美味しいのに人はほとんどいなかった。空いた場所でゆっくり座って食べられた。
ただ、本番の日にこの方法は通用しないと思う。人が桁違いに多いので、終わった後もフードトラックは混むはずだ。
そこで、こういう順番をおすすめしたい。
汝矣島に遊びに来る方、デートで来る方は——先に水光広場のフードトラックで食べて、それから花火を見て、終わったらゆっくり抜ける。
お腹を満たした状態で座って待ち、花火が終わったら人波と一緒に動かず、少し残ってから出る。前夜祭なら、花火の前に食べて、見て、帰るコースがいちばんきれいにまとまる。
夏と秋のあいだの、あの数日
9月初めの漢江は、季節が変わるのを肌で感じられる場所だ。昼はまだ夏が残っている。けれど日が落ちて川から風が来ると、腕にうっすら鳥肌が立つ。暑くも寒くもなく、何時間でも外に立っていられる。ソウルでこの気温になるのは年に数週間しかない。蒸し暑い夏と、思ったより早く来る寒さのあいだの、ほんの隙間。
花火がきれいだったから良かった、というより、あの温度の夜気の中に立って花火を見たことが良かった。
韓国旅行の日程を調整できるなら、この時期を狙う価値がある。花火大会だけで一日がまるごと埋まるし、その一日が旅行全体でいちばん記憶に残る可能性が高い。
本番のタイムテーブル(9月5日 土曜)
前夜祭の翌日が本番だ。一日中プログラムが続く。
| 時間 | プログラム |
|---|---|
| 13:00 〜 18:00 | プレイベント・市民参加プログラム |
| 19:40 〜 20:00 | 公式行事 |
| 20:00 〜 21:10 | 花火 |
| 20:00 〜 20:15 | 🇬🇧 イギリス |
| 20:20 〜 20:35 | 🇺🇸 アメリカ |
| 20:40 〜 21:10 | 🇰🇷 韓国 |
| 21:10 〜 22:00 | アフターDJパフォーマンス |
本番は三カ国が順番にそれぞれの演出を披露する構成だ。韓国の順番が30分でいちばん長く、しかも最後なので、最後まで見るつもりなら21時10分までは場所を確保しておきたい。終わってすぐDJパフォーマンスが続くので、人波を避けたいならこのタイミングで動くのも手だ。
本番にも行く予定なので、行ってきたら前夜祭とどう違ったかをこの記事に続けてまとめます。
花火大会のベストポジションはどこか
いくつか場所を移動してみた結論はこうだ。
元暁大橋と麻浦大橋の間の区間、その中でも漢江バス船着場の近く。
ここがいちばんよく見える。花火が上がる地点と正面から向き合う角度で、前を遮る構造物がない。船着場の建物の電光掲示板の光も一緒に入るので、写真もきれいに撮れる。都会のど真ん中の花火だとはっきり感じられる眺めが、ここで得られる。
漢江バスはソウルの水上バスで、汝矣島の船着場は目印としても分かりやすい建物です。逆に橋の上や橋に近すぎる場所は視界が切れたり、当日は通行が規制されることもあるので避けたほうがいいです。
行き方
| イベント名 | 2026 ソウル世界花火大会(2026 서울세계불꽃축제 / Seoul International Fireworks Festival 2026) |
| 場所 | 汝矣島漢江公園(ソウル特別市 永登浦区) |
| 前夜祭 | 9月4日(金)— 花火20:00開始、約25分。開始10分後からドローンショーが同時進行 |
| 本番 | 9月5日(土)— 花火 20:00 〜 21:10 |
| フードトラック | 水光広場の一角、ソウル市認証の16店舗 |
| おすすめ観覧位置 | 元暁大橋〜麻浦大橋の中間、漢江バス船着場の近く |
| 最寄駅 | 地下鉄5号線 汝矣ナル駅 2番・3番出口から徒歩約5分 |
| 別ルート | 5号線・9号線 汝矣島駅から徒歩約15分。イベント当日は汝矣ナル駅が非常に混むため、こちらのほうが結果的に早いこともある。 |
知っておくと良いこと
- むしろ前夜祭を狙う。本番当日は人が何倍にも増えて、場所取りもトイレも食べ物も戦いになる。前夜祭は花火の規模が本番のフィナーレに匹敵するのに、人はずっと少ない。
- フードトラックは水光広場のほう。汝矣ナル駅前に並ぶいつものトラックと混同しないように。行事用に準備されたソウル市認証の区域が別にある。
- 場所取りは日没前に。20時開始だが、いい場所はそれよりずっと前に埋まる。
- レジャーシートを一枚。芝生と舗装路が混在しているので、薄手のシートがあるだけで快適さがまるで違う。近くのコンビニ(CU、GS25、セブンイレブン。どこにでもあって24時間営業)で安く買える。
- 羽織るものを一枚。昼の気温だけ見て半袖で出ると、夜の川風で後悔する。
- 食べ物は打ち上げ前に。始まると全員が同じことを考えるので、どのトラックも行列が伸びる。
- 開始10分後からは視線を分けて。花火だけ見ていると、反対側の空のドローンショーを丸ごと見逃す。
- 本番は帰り道。終わった瞬間に人波が汝矣ナル駅へ一斉に向かう。30分ほど残って川沿いを歩くか、フードトラックに寄ってから動くほうがずっと楽。
- 現金はほぼ不要。ほとんどのトラックがカードと韓国のモバイル決済に対応している。ただし海外発行カードが通らない店もまれにあるので、少額の現金は保険として。地下鉄はコンビニで買えるT-moneyカードがいちばん楽。
よくある質問
Q. 2026 ソウル世界花火大会はいつ開催ですか?
本番は9月5日(土)、花火は20時から21時10分までです。前日の9月4日(金)に前夜祭が開かれ、前夜祭の花火は20時開始で約25分間でした。
Q. 入場料はかかりますか?
かかりません。汝矣島漢江公園は開放された公園なので、誰でも無料で観覧できます。
Q. 前夜祭と本番、どちらに行くべきですか?
花火の完成度だけで見れば、前夜祭も本番のフィナーレに匹敵します。本番は体感で10倍近く人が多く、場所を確保すること自体が大変です。混雑が気になるなら前夜祭をおすすめします。
Q. どこから見るのがいちばんよく見えますか?
元暁大橋と麻浦大橋の間、漢江バス船着場の近くをおすすめします。視界を遮る構造物がなく、花火と正面から向き合う角度です。
Q. 何時までに行けば場所を確保できますか?
前夜祭でも日没前には芝生がかなり埋まっていました。本番はもっと早いので、余裕をもって動いてください。
Q. 食べ物は買えますか?高くないですか?
水光広場の一角にソウル市認証のフードトラックが16店舗入ります。鶏の串焼きが1本5,000ウォン、軽食類はおおむね5,000〜6,000ウォン(約550〜660円)です。汝矣ナル駅前のいつものトラックとは別の区域なので、場所を確認してから向かってください。
Q. ドローンショーもありますか?
あります。花火が先に始まり、約10分後からドローンショーが合流して同時に進行します。世宗大王、虎、ソウルへの訪問を歓迎する文字など、さまざまな形が作られます。
ひとことでまとめると
ソウルに来るなら、花火大会は一度は日程に入れてみてほしい。そして可能なら、本番より前夜祭を。人はずっと少ないのに空は本番のフィナーレと同じくらい華やかで、何よりトラックの並ぶ通りをゆっくり歩きながら一品ずつ選べる。夏から秋へ移る数日、川風と火薬の匂いと焼きたての串の匂いが一度に混ざる夜。その部分は写真にはうまく写らない。
公式情報:ハンファ ソウル世界花火大会 公式サイト(韓国語) · Visit Seoul イベントページ(英語)